「キツイけど稼げる」はもはや昔話
実は筆者は、元引越会社トラックドライバーである。と言っても30年も前のことだが、この30年間で引越業界において変わったこと、変わっていないことを観察すると、「引っ越し難民」の根本的な原因と、引越業界の構造的課題が見えてくる。
筆者が引越会社で働いていたときは、「引っ越しの仕事は、キツイけれどもお金が稼げる」と言われていた。しかし今や、それも昔話となってしまったようだ。
引越ドライバー、引越助手の給料は、当時からほぼ横ばい状態と思われる。
まずは引越助手の待遇から確認しよう。
アルバイト情報サイトを眺めると、大手引越会社の引越助手は、時給1200円~1400円程度が相場のようである。
物価上昇の中、30年前と変わらない給料
当時、筆者の在籍していた引越会社では、引越助手(アルバイト)の基本日給は7500円。そこから午後便と呼ばれる引っ越しを1件行うごとに2000円が加算された。
1日の引越件数が1件で終わることはあまりなかったから、事実上の最低日給が9500円で、(時期にもよるが)3~4日に1回は3件の引っ越しをこなし日給1万1500円を得ており、さらに4件以上引っ越しを行える日もあった。(アルバイトドライバーの場合は、さらに1件1000円の運転手当が支給された)
対して、時給1200円で8時間働いたとすると9600円、時給1400円だと1万1200円。
つまり、引越助手の対価は、ほぼ30年間据え置きされていることになる。
では、正社員ドライバーの場合はどうか?
引越作業においてリーダー役を務める正社員ドライバーの場合は、概ね年収400~500万程度と言われている。筆者がアルバイトから正社員へと変わったときの年収はこの範囲に入っていたから、これまた30年間据え置きされていることになる。
現実的には、物価上昇や平均賃金の上昇なども考慮すると、待遇は悪化しているというべきだろう。