※本稿は、山口雅之『常識を逸脱せよ。日本発「グローバルメガベンチャー」へ テラドローン・徳重徹の流儀』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

インドネシアでドローンによる農薬散布を手掛ける
テラドローンという社名から、同社をドローンの製造・販売会社と思い込んでいる人も多いかもしれない。
だが、設立時から徳重はメーカーは目指していない。ドローンによる社会課題の解決というソリューションビジネス、それからドローンや空飛ぶクルマの運航管理を行うUTM。現在のところ主要事業はこの2つだ。
それぞれ現状はどうなっているのだろう。
【徳重徹】
ドローンソリューションのほうは、測量、点検、農業が柱になっています。測量は大手ゼネコンや建設会社が主なクライアントで、すでに2000件以上の実績があります。また、当社の業務はサービスの提供が中心ですが、一部ハードウェアとソフトウェアの外販も行っています。ちなみにUAVレーザスキャナ「TerraLidar」は国内導入実績ナンバーワンです。
点検は電力や石油化学業界と組んで石油・ガスタンクや煙突、ボイラーなどのインフラ設備に対し実施しています。これもオペレーションにとどまらず、点検のためのハードやソフト開発も手がけています。さらにINPEXと事業構想「INPEX-Terra Drone Intelligent Drone構想」を立ち上げ、DXも推進しています。
農業は規模の大きな海外の農場が対象です。代表的なのはインドネシアのパームプランテーションでのドローンによる農薬散布。ひとつのプランテーションの広さが3000~5000ヘクタールあります。これは東京ドームの1000倍以上です。この広大な地にいままでは人の手に頼って農薬を撒いていたのですが、コロナ禍での人材不足や過酷な労働環境など、さまざまな問題と無縁ではありませんでした。私たちのドローンビジネスはそれらを解決するための有効な手段となっています。
これだけの敷地に農薬を効率的に散布するには高性能のハードに加え、高度な技術が不可欠です。現在は当社がオペレーションを行っていますが、いずれは自分たちでドローンを操縦できるよう、現地の人たちのトレーニングにも力を入れています。
なお、パームプランテーションに関しては自然破壊にもつながりかねないので、当社はRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil/持続可能なパーム油のための円卓会議)に加盟しているところとしか契約していませんし、今後もその姿勢は続けていきます。
世界的なドローン市場調査機関であるDrone Industry Insightsが毎年、世界の約900社に及ぶドローンサービス企業の情報をもとにして、ランキングを発表しています。その2024年版(「ドローンサービス企業 世界ランキング2024」)で当社は産業用ドローンサービス企業として世界1位を獲得しました。これは2020年以来2度目です。
このように、テラドローンのドローンソリューションサービス事業は、すでに広く世界で認知されていると同時に、高い評価を得ているのです。