「なんとなく集中できない」「だるい」。最近、学生や社会人の中にはこのような訴えが増えているという。ナビタスクリニック川崎院長の内科医・谷本哲也さんは「そうした症状の要因のひとつに、日本人に見過ごされがちなある栄養素がある。外国では、この栄養素の血中濃度を測定する人も多い」という――。
脳神経系の概念
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例えば、机に向かって勉強に励む受験生。両親ができることは食事づくりなどの後方支援です。多くの親御さんは「うちの子にはしっかり食べさせているから栄養もばっちり足りているだろう」と思っているかもしれません。確かに現代の日本は、かつてないほど食に恵まれた時代で、スーパーやコンビニには多様な食品が並び、なんでも選ぶことができます。

ところが、こうした食の豊かさの裏には意外な盲点が潜んでいます。子供も大人も隠れた栄養不足があるのです。つまり、カロリーは足りていても、健康維持に欠かせない栄養素をしっかり摂取できているとは限らないのです。

内科医の私のところにやってくる受験生や社会人には、「なんとなく集中できない」「だるさがある」「風邪を何度も引いてしまう」と訴える方が少なくありません。しかし、診察しても特段問題なく、一般的な血液検査でも貧血などの異常は特に見つかりません。その症状の要因は個人によって異なりますが、私は重要な栄養素のひとつである「ビタミンD」不足が関係している可能性がある、とにらんでいます。

太陽の光から作られる特別なビタミン

ビタミンDは「太陽のビタミン」と呼ばれます。日光に含まれる紫外線(UVB)を皮膚に浴びることで、私たちの体内で自然に作られるからです。これは他のビタミンとは異なる、非常に特徴的な性質です。

ビタミンDは食事から摂ることもできます。特にサケやサバなどの脂ののった魚、卵黄、干しシイタケなどがビタミンDを豊富に含みます。しかし、現代の子供たちの食卓では、これらの食材が以前よりも少なくなってきています。ビタミンDが添加された食品(強化食品)は欧米では一般的ですが、日本ではあまり普及していません。そのため、ビタミンDの多くはやはり「日光」か「魚やきのこ」などの食材から摂る必要があるのです。

体内で作られたビタミンDは、肝臓と腎臓で活性型に変わり、骨の健康を保つことは有名な話です。しかし、役割はそれだけでなく、最近では免疫機能や脳の働きにも関与することがわかってきているのです。私の外来には海外出身の方も多く受診されますが、「ビタミンDを測定してほしい」という要望が非常に多いのに気づきました。海外に比べ日本ではそれほど注目されていませんが、最近の医学専門誌で特集記事が組まれていたこともあり、私もビタミンDに改めて注意するようになりました。