リスナーの「数字」が可視化されるように

それまで「ニッポン放送は都内で聴きづらいから」「ラジオを受信するハードを持っている人が少ないから」と並べ立てることができた“聴かれない理由”はもう通用しません。長らく苦しんだハンデ戦の終焉とともに、ここからが本当の勝負――言い訳ナシのコンテンツ勝負の時代に突入したのです。

ラジコの登場によって、ラジオの作り手が見る「数字」も一変しました(少なくとも、僕は変わりました)。

それまで、ラジオをどれくらいの人が聴いているのかという「数字」は、2カ月に一度の聴取率調査でしか見られなかったのですが、ラジコの登場により、ラジコの再生回数という形で、数字をデイリーでいつでも見たい時に見られるように。これは業界にとって画期的な変化でした。

生放送の数字だけでなく、タイムフリー機能を使って、ひとつの番組が放送後にどれくらい聴かれたのか、また、どの時間帯で聴かれたのか、どんな年代の人が聴いてくれているのかが、数字として可視化されるようになり、分析のスピードと精度が格段に上がったのです。

イヤホンをつけてスマホを使用する人
写真=iStock.com/koumaru
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生放送ではなく「後で聴く」メリット

ラジコのタイムフリー機能が登場した結果、オールナイトニッポンの場合は生放送よりも、放送後の翌朝の通勤通学時間帯や土日の昼間に数倍多く聴かれていることが判明しました。「放送から時間が経ってからバズる神回」も珍しくなくなりました。

なぜこんな現象が起きるのかというと、SNSの効果です。

生放送を聴いたリスナーが番組のハッシュタグをつけてリアクションをTwitter(現・X)に投稿することで、「反響の可視化と拡散」が生まれるのです。トレンド上位に上がった番組の話題は、そのままネットニュースに取り上げられ、さらに多くの人の耳に届く。

生放送には「リアルタイムにどんな話が飛び出すかわからないドキドキ感を、同時に聴いている他のリスナーと一緒に味わう」という面白さがありますが、それは同時に「聴いてみないと、その回が面白いかつまらないかはわからない」という不確実性も伴います。

その不確実性を受け入れて2時間の生放送に立ち会ってくれるリスナーは、本当の意味でのコアリスナーでしょう。ただ、コアの数を広げるのは限界があります。

その点、普段からそれほどラジオを聴いていない人たちにとって、あらかじめ番組の評価がわかれば、「話題の放送回を聴いてみよう」と安心して自分の時間をラジオに捧げることができるでしょう。