これでは現場の士気は上がりようがない
日産の経営状況が厳しい。2024年度の同社最終の損益は6709億円の大幅赤字だった。5月13日の決算発表では、トランプ関税などの不透明な要素もあり、2025年度の営業利益と当期純利益の予想数値を示すことができなかった。同社の経営状況は一段と厳しい状況に追い込まれている。
経営状況が悪化した背景には、何といっても、需要者が欲しがる売れる車を作ることができなかったことにある。それは、突き詰めると経営の問題といえるだろう。本来なら、経営陣は責任をとって退任すべきとの指摘は多い。
しかし、3月に社長を退任した内田誠氏ら4人の執行役は、計6億4600万円の報酬を受け取った。多すぎるとの指摘の多い取締役の数は減っていない。取締役の入れ替えも進んでいない。その一方、同社はコストカットのため、現場の人員を大幅に削減する。これでは、現場の士気は上がりようがない。
当面、日産の業績は厳しい状況が続くだろう。経営陣は、そうした状況をいかに脱しようと考えているのだろうか。リストラで現場の人員を減らすだけでは、同社の本格的な再生につながるとは考えにくい。どうも経営陣の目論見が見えてこない。プライドがハードルとなって、ホンダとの統合を拒否した日産は独力で生き残れるのだろうか。明るい絵を描くことが難しい。
武漢工場は稼働からわずか4年で閉鎖
ここへきて、日産は収益力の低下に歯止めがかからない。主たる要因は、何といっても、売れる車を作ることができないことだ。
北米では、トヨタやホンダが需要を取り込んだハイブリッド車(HV)を投入できなかった。世界最大の自動車市場である中国では、BYDや浙江吉利(ジーリー)や上海汽車集団(SAIC)などによる電気自動車(EV)の投入が相次ぎ、市場の競争が一段と激化している。その中で、日産は競争力を失った。
日産の中国事業は、2022年に稼働した武漢工場を閉鎖するほど中国事業は悪化した。欧州でも日産の販売は振るわない。さらに、中国企業の進出で東南アジア新興国の自動車市場も減速気味だ。
日産は、もっと速い段階でエンジン車中心の事業戦略を見直すべきだった。ところが、その決断が遅れた。収益の悪化により、同社は工場を閉鎖し人員を削減してコストカットを優先した。昨年11月、内田社長(当時)が世界で生産能力を2割削減し、9000人を削減すると発表した。