ホワイトハウスが隠した「プーチンからの条件」
ロシアとウクライナの部分合意の背景には、プーチン氏の打算が垣間見える。
ワシントン・ポスト紙の報道によると、プーチン氏は全面停戦の前提条件として、各国からウクライナへの軍事支援と情報提供を全面的に打ち切るよう求めた。
ロシア側は声明で、これを「戦闘行為を終わらせるために欠かせない条件」と位置づけている。加えて、停戦の実効性確保や、ウクライナの兵力動員と再武装の防止も条件に盛り込んだ。
実はロシア側が示したこれらの条件は、ホワイトハウスが発表した会談概要からごっそりと抜け落ちている。米政治・文化誌のニュー・リパブリックは、ホワイトハウスが発表から省いた理由として、「ロシアの条件はウクライナとその同盟国には受け入れがたいもの」であり、意図的に言及を控えたためだと分析している。
さらに踏み込むならば、トランプ政権がロシアに対して協調的な姿勢を演出したいため、摩擦を避けた可能性が考えられる。トランプ政権はロシア側の要求に対する公式見解を示していない。
ウクライナ側も大枠で受け入れの意向か
ウクライナは会談にどう反応したか。米ABCニュースの報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は記者会見で「懐疑的な気持ちはあるが、部分的な停戦が実現すれば良い成果だ」と語った。ロシアの意図に警戒しながらも、市民の安全確保につながる合意に前向きな姿勢がうかがえる。
ゼレンスキー氏は、ABCニュースの国際担当チーフ特派員ロングマン氏の質問に「トランプ氏と対話し、詳細を把握したい」と慎重に回答した。また、「我々はこれまでも一貫して停戦を求め、エネルギー施設への攻撃に反対してきた」と付け加え、自身の姿勢とも一致するとの認識を示している。
一方でゼレンスキー氏は、部分的合意への警戒感を同時にうかがわせている。BBCによると、「米ロ間でどのような提案が交わされたのか、内容を確認する必要がある」と強調したという。
さらに、「この戦争の当事者はロシアとウクライナであり、ウクライナ抜きの話し合いでは解決につながらない」と訴えた。自国の将来が米ロ間でのみ協議されている現状への懸念が読み取れる。
ウクライナが置かれた厳しい状況
現在、ウクライナ軍は厳しい状況に置かれている。米タイム誌の報道によると、ウクライナ軍は昨年8月、ロシア領クルスク地域に侵攻し、約1300平方キロメートル(500平方マイル)の地域を掌握する予想外の成果を上げた。しかし今、ウクライナ軍は撤退を強いられ、停戦交渉で使える重要なカードを失いつつある。