その6週間後、トランプ氏はエルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領と会談している。ニューヨーカー誌はこの場でトランプ氏が、「サディスティックな独裁者(ブケレ氏)を魂の友のように扱った」と指摘。ブケレ大統領はギャングを大量に収容するため厳格な刑務所政策を推進していることで知られる。
会談では笑みを浮かべたトランプ氏が、「刑務所をあと5つ建設してほしい。うちの国のやつらが次に入るから」とジョークを飛ばす場面があった。トランプ氏は3月、ギャング組織のメンバーとされるほとんど犯罪歴のない人々を、エルサルバドルの厳重警備の刑務所に国外追放している。
ニューヨーカー誌は、「(ホワイトハウスの)オーバルオフィスで、これほどまでに吐き気を催す光景を思い出すのは難しい」と酷評している。
「行動派大統領」と称える熱心な支持層も
批判の声が上がる一方で、トランプ氏の「実行力」に熱狂する支持者も少なくない。米アトランティック誌によると、多くの支持者はトランプ氏の就任初期100日間を「公約実現の過程」と捉え、「全ての政策には賛同できなくとも、少なくとも行動している。何もしないよりはマシだ」という見方が広がっているという。
国境近くの小都市の市長も、移民政策の変化を実感している。米ニューヨーク・タイムズ紙が取材したテキサス州ローマ市のハイメ・エスコバー・ジュニア市長は、「トランプの100日間は良い面と悪い面が混在していた」としながらも、「全体として前向きだった。トランプへの投票は正しかったと今も思う」と語った。
トランプ氏はアメリカの「パイロット」であると例え、信頼を寄せる市民もいる。ペンシルベニア州レディングのハミド・チョードリー氏は同紙に、「彼は飛行機のパイロットだから支持する」と述べ、「たとえパイロットが嫌いでも、飛行機が墜落することは望まない」と説明。パキスタン出身の移民で現在は米国籍を持つチョードリー氏は食料品店を経営しており、「アメリカは一人の政治家より大きい」と国の将来を信じているという。
悪化する経済指標、海運の新規予約はマイナス45%に
その一方で、経済界には確実に不安ムードが広がっている。トランプ政権の経済政策、特に対中高関税は、すでに市場に混乱をもたらし始めた。
英エコノミスト誌によると、4月9日の関税実施前からすでに、世論調査では消費者と企業の懸念が読み取れたという。同誌はダラス連銀の調査を引用し、経済指標の一つである「製造業の生産量(manufacture's output)」が4月、記録的水準にまで低下したと報じている。
国際物流の状況を示す海運データも、関税の発表に敏感に反応した。エコノミスト誌の分析では、4月14日の週には早くも、中国・アメリカ間の新規航海予約が前年比マイナス45%と大幅に減少。船舶が寄港をキャンセルする「ブランク・セーリング」も全航海数の40%に達している。