2025年1月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。政治・経済部門の第3位は――。

政治・経済部門では、米の価格高騰の原因を深掘りしたキヤノングローバル戦略研究所研究主幹・山下一仁さんの記事が1位に。山下さんは政府が備蓄米を放出しても「米の価格は下がらない」と強調しています。2位は、かつて「第2の夕張市」と呼ばれた高知県須崎市のリポート。人気キャラクター「しんじょう君」を活用して財政危機から立ち直らせたキーマンに、ライターの甲斐イアンさんが迫る長編記事です。3位には、解剖学者・養老孟司さんが「田中角栄のせいで日本が貧しくなった」と指摘する記事がランクイン。長引く景気低迷の原因を養老さんの視点で深掘りした記事に注目が集まりました。1~5位のランキングは以下の通りです。

▼第1位 だからコメの値段が下がらない、下げるつもりもない…JA農協のために備蓄米を利用する農水省の呆れた実態
▼第2位 ふるさと納税が200万円→34億円に…「第2の夕張」と呼ばれた金欠の町を元フリーターのヨソ者が復活させるまで
▼第3位 日本人がここまで貧乏になったのは「田中角栄のせい」である…養老孟司が見抜いた“不景気の根本原因”
▼第4位 ソ連崩壊前にそっくり…「呑まなきゃやってられない」酒におぼれるロシア人を大量に生み出したプーチンの限界
▼第5位 「マイナンバーカードには有効期限がある」トラブル続きのマイナ保険証を政府が国民に押し付ける本当の狙い

日本の景気が良くならないのはなぜか。解剖学者の養老孟司さんと精神科医の名越康文さんとの対談を収録した『虫坊主と心坊主が説く 生きる仕組み』(実業之日本社)より、一部を紹介する――。
自民党総裁に選ばれ、記者会見をする田中角栄氏=1972(昭和47)年7月5日、自民党本部
写真提供=共同通信社
自民党総裁に選ばれ、記者会見をする田中角栄氏=1972(昭和47)年7月5日、自民党本部

こんなもん生かしたって無駄だなと思う

――「人間ってなんで死ぬんですか?」と問われたら、何と答えますか?

【養老】まあ、歳とったらわかるよ。こんなもん生かしたって無駄だなと思う。

――死ぬことは怖くないですか?

【名越】30歳の頃は、死ぬのが怖かった。いまは、死ぬ途中が怖いかなと思う。痛い目に遭うのが嫌だから。

【養老】夜寝るでしょ。そのまま意識が戻らなかったらどうする? 保育園の子が言ってるよ。「死ぬのが怖い」って。僕は目が覚めなかったらどうしようって思わない。

【名越】僕がずっと16年間通ってたお寺のすごい和尚さんが、この間遷化されたんです。東京から日帰りでお葬式に行って座っていたときに、僕もこのままで一緒に連れてってくれたらどれだけ楽だろうと思ったけどね。

――死んだら星になると言うじゃないですか。そういうのを聞いていたらそちら側に行くのか、とか。でも考えていると、わからなくなる。

【名越】星を見ながらずっと浸っていたら、だんだん慣れてくるかもしれないよ。

【養老】あれも俺だと思えばいいじゃない。星が言ってるよ。遠くに置かないでくれってさ(笑)。

死んだら抱えていた問題はきれいに全部消える

――自然と一体化する、いいですね。

【養老】自分の場合はこのままいっても、低め安定で、そのまま低め低めをいくんだろうなと。

【名越】テンションが高くて判断が早い人は社会的には目立つし重宝もすると思うのですが、そういう人ばかりだと切れ味は良いけれど、単純な価値観が幅を効かせるようになって、より賢い者の知恵に全部持って行かれるような気がして仕方ありません。

【養老】きょう散歩してても、いろんな雑念が浮かぶんですよ。ほんとうに知り合いが大勢死んだなあと思って。同級生は何人も死んだ。僕の場合は、死がもっと具体的ですよ。医学部の同級生って付き合いが長いから、大学時代も長かったし、学部でも同じ時間を過ごしたし、その後もつきあいがあった。そういう連中がみんないないから、喋る相手がいない。何か言おうと思っても、みんな死んじゃったんだから。

それとね、あいつは、こういう問題を抱えていたなあということもときに思い出すわけ。でもさ、死んだら、問題も綺麗に全部消えたなと思った。