認知症リスクが“ワクチン接種で20%減少”するという最新研究が話題に。医療ジャーナリスト木原洋美さんが注目のワクチンと認知症予防の最新事情を取材した――。
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写真=iStock.com/pocketlight
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米スタンフォード大の最新研究で注目のワクチン

日本人が一番なりたくない病気は「認知症」だという。複数の調査で、2位の「がん」を抑えてトップに君臨している。たとえば日本認知症予防学会と食から認知機能について考える会が共同で行った調査では、一般では48%、医療従事者では35%がそう回答していた(2020年9月14日発表)。

そんな認知症になる確率を、なんと「帯状疱疹ワクチン」を接種することで20%も減らすことができるらしい……というスタンフォード大学のレポートが、4月2日に科学誌『ネイチャー』に掲載されて、大きな話題になっている。

まずは帯状疱疹について説明しよう。

帯状疱疹は、水疱瘡のウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が原因で引き起こされる皮膚病だ。主に子供時代に水ぼうそう(水痘)にかかった人の体内(神経節)に潜伏していた水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が、加齢や疲労、ストレスなどによる免疫低下を引き金に活動を再開することで発症する。

横浜市立大学附属市民総合医療センター・ペインクリニック内科の北原雅樹氏(写真=本人提供)

国立感染症研究所のデータによれば、成人の約9割がVZVに既感染で、帯状疱疹の発症リスクを抱えているとされおり、発症率は50歳代から高くなって、80歳までに約3人に1人が発症する。

「中高年の病気と思われがちですが、実はストレスの関係で、日本では20歳代に小さなピークがあります。自分は若いからと安心してはいけない」

そう釘を刺すのは、慢性痛医療の名医・横浜市立大学附属市民総合医療センター・ペインクリニック内科部長/診療教授の北原雅樹氏だ。

帯状疱疹で「様子見」は禁物

なにせ帯状疱疹は、症状を本格化させるとものすごく痛い。症状には個人差があるが、多くは皮膚に生じる神経痛のような痛みから始まる。

と言っても皮膚の違和感やかゆみ、しびれとして感じる程度から、ピリピリ、ズキズキ、チクチク、針で刺されたような痛みや、焼けるような痛みまで、その種類は一口では言い表せないほど多彩だ。

その後は、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状にあらわれ、痛みは次第に強度を増し、眠れないほど痛むこともある。強い痛みや皮膚の症状は、主に体の左右のどちらかにみられるのが帯状疱疹の特徴で、3~4週間ほど続く。

筆者が知る、ある総合診療科の名医は、自分が帯状疱疹になった際、「患者さんの痛みを体感してみよう」と抗ウイルス薬を内服せずに様子を見てみた結果、あまりの激痛に「心底後悔した」と言っていた。

「発症したら24時間以内、遅くとも72時間以内に抗ウイルス薬を内服もしくは注射することが大切です。最大の効果を得るには、できるだけ早く治療を始めることです」(北原氏)