お笑いコンビ「サバンナ」の八木真澄さんが、今年6月、難関資格といわれるファイナンシャル・プランニング(FP)技能検定1級の学科試験に合格した。現在は9月の実技試験に向け、営業などの仕事と並行して勉強を続けている。中高年のリスキリングを体現する八木さんに、FP資格にチャレンジした理由、資格取得後に仕事に起こった変化について聞いた。

※本稿は、「PRESIDENT Growth」2024年9月3日公開記事の一部を再編集したものです。

サバンナ 八木真澄さん
撮影=キッチンミノル

レギュラー番組消失をきっかけに勉強をスタート

リアルな話、2年前、48歳のときにレギュラー番組がゼロになったんです。僕は19歳のときに初めてテレビに出させてもらって、仕事が軌道に乗ってからは、月曜は生放送、火曜はラジオ、水曜はロケ、木曜は生放送、土曜は営業、日曜は収録というルーティンを続けてきました。それがある日、チーフマネージャーが「八木さん、ちょっとお話あるんですけど」と声をかけてきた。これ、芸人からしたら一番怖い言葉なんです。何かあるなと思ったら、案の定、「大阪の番組なんですけど、サバンナさん卒業ということで……」って言われたんです。

その後は1本、また1本とレギュラー番組が減っていきました。そして、最後のレギュラー番組が終了すると聞いたのが2022年の秋。その時の気持ちは、動揺とも、驚きとも、腹立たしさとも違う感情でしたね。「うーん……」っていう感じで、ただただ動けなくなりました。

テレビのレギュラーがなくなった当初は、何をしていても楽しめない日々が続きました。気晴らしをしようとジムやサウナに行ってもテレビが置いてあって、かつて自分が出ていた番組に他の人が出ているのを見るとストレスになるんです。相方(高橋茂雄氏)はレギュラーが10本もあるし、「ザ☆健康ボーイズ」で15年間コンビを組んできた(なかやま)きんに君も、吉本を退社してバリバリ稼いでる。それにひきかえ僕は、今日、明日食べるお金もない。しかも僕だけ家族がいる。1人負け組です。そんな状況の中、「どうしよう……」と思って勉強を始めたんです。

FPの勉強を始めてみると、精神的に安定していくのが自分でもわかりました。勉強をやっているときは他のことを考える必要がないからラクなんです。朝起きたら勉強する。疲れたらご飯を食べて勉強する……夜8時ぐらいになってお風呂に浸かっていると、「今日、なんか頑張ったなぁ」って思えるんです。そして、お風呂上がりに1時間ぐらい復習してからお酒を飲んでいると、なんか楽しい自分がいたんですよ。3カ月後の試験に向けて勉強だけに集中する生活を送ってたら、「おいしくお酒が飲める日々」がやってきたんです。

僕が勉強を始めたのが2022年の5月で、その年の9月には3級、翌年の1月には2級に合格しました。1級の学科試験は3回不合格だったんですが、今年5月に行われた試験でやっと合格しました。今は9月の実技試験に向けて勉強しています。

僕は今年の8月で50歳になりましたが、結果的に、このタイミングで自分を見つめ直すことができたのは幸運だったと思ってます。冷静に考えてみると、サラリーマンの定年である65歳以上で今、コンビでテレビの全国ネットにレギュラーで出ている人はほぼいないんですよ。さまぁ~ずさん、爆笑(問題)さんは50代後半、くりぃむ(しちゅー)さん、ナイナイ(ナインティナイン)さんは50代前半。その下となると40代の千鳥まで下がってくる。サラリーマンの人は役職定年や早期退職があって55歳くらいでもう先が見えるじゃないですか。「自分の賞味期限はあと1、2年。そんなら新しいところを行かないと……」というのが正味な話です。