「階層型組織」から「自律分散型組織」へ変化

(3)組織形態の変化

共通言語の重要性が高まっている背景として、企業の組織形態が変化しつつあることも挙げられます。

これまで多くの日本企業は「階層型組織」の形態を取っていました。その特徴としてピラミッド状の構造、トップダウン型の意思決定、明確な役割分担、標準化された業務プロセスが挙げられます。高度経済成長期に大きな成功を収めた、比較的安定した組織運営モデルだと言えるでしょう。

他方、階層型組織については、環境の変化への対応が遅く、柔軟性に欠けることが指摘されています。現場レベルでの判断ではなく、上層部からの指示を受けることをベースにするため、構成員が「指示待ち」になり、彼らの主体性や意欲が発揮されないことも少なくありません。

また、こうした組織では、従業員一人ひとりに対して個人や自律性を活かすことよりも、常に同質的な成果を求めることによって、企業が維持されてきたという背景があることもしばしばです。こうした環境では、結果的にイノベーションが生まれにくくなる傾向もあります。

このように、変化の激しい現代においては、階層型組織の限界が感じられ始めてきています。そこで注目されているのが「自律分散型組織」です。これは、個々の従業員やチームに権限を委譲し、自律的な判断と行動を促す、フラットなかたちで構成される組織形態です。

自律分散型組織では、各チームやメンバーが自律的に目標を設定し、ボトムアップで活動します。ここでは、程度の差はあれ、構成員が自らの判断のもとに行動する自由を持ちます。すなわち、判断が上層部に集中するのではなく、現場やチームレベルでもおこなわれるのです。これにより、さまざまな変化に対して迅速で柔軟な対応が可能になるというわけです。

自律分散型こそ、組織全体の方向性を共有することが大切だ

ここでは、固定的な業務だけではなくプロジェクトベースで仕事がおこなわれ、それに応じてチーム編成がおこなわれることもしばしばです。これにより、組織内外のネットワークを活用し、チーム間で情報共有や協力が進みます。

堀越耀介『世代と立場を超える 職場の共通言語のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)
堀越耀介『世代と立場を超える 職場の共通言語のつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)

個々のメンバーの多様性が積極的に評価され、各人が主体的に活動することで、現場からのアイデアや新しい取り組みが生まれやすくなるわけです。また、自律性が確保されることによって、構成員が自己の価値を感じやすくなり、仕事や組織へのモチベーションやエンゲージメントも向上することが期待されるでしょう。

しかし、自律分散型組織も完璧な組織というわけでは決してありません。自律分散型では、組織全体の目標やビジョンを共有する仕組みがなければ、組織の方向性や目的がばらばらになる可能性もあるからです。そこでは、目的や価値観を共有することで、「求心力」を維持しなければならないでしょう。そのためには「共通言語」をつくることが重要なのです。

もちろん、多くの国内企業が、現時点で階層型組織から自律分散型組織に移行することは考えにくいでしょう。しかし、VUCAの時代において、世代間の価値観のギャップや働き方の多様化が進むなか、従来の階層型組織も何らかの改革を必要としていることは事実です。

その際に、自分たちの企業に合った組織の形態や制度を模索していくことが求められます。その際に重要な役割を果たすのが、「よい組織とは?」「これからのリーダーシップとは?」と語り合い、共通言語をつくっていく対話なのです。

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