ロボット掃除機「ルンバ(Roomba)」で知られる米iRobot社が今春、事業継続能力に「重大な疑義がある」と発表した。その後発表した新製品のラインナップも、市場の反応は芳しくない。かつてロボット掃除機市場のパイオニアとして君臨したiRobotだが、製品革新の遅れや中国メーカーの台頭により、荒波に揉まれている――。
2022年8月5日、カリフォルニア州サンラファエルのターゲット店舗の棚に陳列されたアイロボット社製ロボット掃除機「ルンバ」
写真=ゲッティイメージズ/AFP/時事通信フォト
2022年8月5日、カリフォルニア州サンラファエルのターゲット店舗の棚に陳列されたアイロボット社製ロボット掃除機「ルンバ」

株価はピーク時の2%未満

かつて家庭用ロボット掃除機の代名詞だったiRobotが、今や存続の危機に直面している。

米CNNによると、iRobotは2025年3月12日の四半期決算報告で「会社の継続能力について重大な疑義がある」と明らかにした。ロボット掃除機市場の牽引役だった同社の突然の宣言に、市場は動揺。時間外取引で同社の株価は30%下落した。

5月29日時点でも目立った回復は見られない。1株あたり3.51ドル付近をさまよい、年初来55.85%の下げ幅となっている。2021年に記録したピーク時の197.4ドルと比較すると、現在の株価は1.78%にすぎない。

契機となったのが、Amazonによる買収計画の破綻だ。当初Amazonが計画していた17億ドル(約2500億円)規模の買収計画は、EUの規制当局が阻止に動く可能性があると警告したことを受け、2024年1月に中止された米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、iRobotは買収の成立を前提に巨額の借り入れを行っていたが、計画中止を受けて人員を50%以上削減している。

米CNBCは買収断念以降、iRobotの財政状況は悪化の一途をたどっていると指摘する。Amazonのアンディ・ジャシーCEOは、同メディアのインタビューで「我々は買収計画を放棄した。iRobotはスタッフの3分の1を解雇し、株価は完全に暴落し、そして今、彼らが継続企業として存続できるかどうかという本当の疑問がある」と同社の厳しい環境を指摘する。

Amazonという救世主を失ったiRobotは、自力での生き残りを模索する厳しい局面に立たされている。

今春に新モデルを一挙投入したが…

2年ほど前にネット掲示板「レディット」に投稿され、今でも海外のソーシャルメディアで転載され続けている1枚の写真がある。ルンバを販売するiRobotのショップ店内を写したものだ。