投資のプロは、「長期」など考えない
投資を考えている人が金融機関へ相談に行くと、必ず見せられるグラフがあります。直近10年間の日経平均です。
「10年前に1万円で買った投資信託が、いま3万円になっています」などと言って右肩上がりのグラフを見せられると、「長期投資なら、こんなに儲かるのか」と思い込んでしまいます。
けれど、株価が上昇に転じたのはここ10年間ほど。
バブルが崩壊してから、日経平均は10年間下がり続けました。1989年の年末には3万8915円でしたが、10年後には1万5000円を切り、2003年には8000円を切るまでになったのです。
同じ10年間のグラフでも、株価がだだ下がりしているグラフを見せられれば、投資などしようとは思わないでしょう。
つまり、同じ10年間でも、切り取り方によって素晴らしく見えたり、怖く見えたりするのです。
しかも、これらはすべて過去のこと。この先も右肩上がりになるとは限らない。もしかしたら、これから10年間、下がり続けるかもしれません。
そもそも、「長期投資」を考えて運用しているプロは、1人もいないと言っていいでしょう。
35年前に買った日経平均のインデックス投信売却で損も
「長期投資におすすめの商品ですから、長い目で見たら安心です」と言われても、これを運用するファンドマネージャーは、短期間で良い運用実績を出すことしか考えていないと思います。
投資信託の運用では、3カ月ごとに決算日があるものが多く、そこで運用実績が悪いとボーナスが減るかもしれないし、外資系などでは、クビになるケースもあります。
そんな人たちが、長期投資を本気で考えるわけがありません。
もちろん、インデックス投信など、ファンドマネジャーが運用するのではなく、特定のインデックス(市場の動向を示す指標や指数)に連動して自動的に買っていく投資信託もあります。
ただ、インデックス投信も必ず右肩上がりになるわけではありません。
たとえば、1989年の年末に3万8915円だった日経平均は、2024年9月末現在で3万7919円。もし、日経平均のインデックス投信を35年前に買っていたら、長期で儲かるどころか、売却すればマイナスになる(この間、手数料も引かれている)のだと肝に銘じておいたほうがいいでしょう(平均利回り1〜2%程度のリターンはあります)。
経済が右肩上がりだったから!