副大統領はエリート嫌いの「番犬」

副大統領のバンス氏は、過酷な家庭環境から海兵隊へ進みます。軍を退役すると奨学金が得られるので、その資金でイエール大学に入り、弁護士になりました。彼の著書『ヒルビリー・エレジー』にはそうした生い立ちがつぶさにつづられています。とても胸を打つ作品を書いた人が、どうして「トランプよりもトランプらしい」と言われるほどの振る舞いをするようになったのでしょうか。

【写真】J・D・バンス氏
J・D・バンス氏(写真=Daniel Torok/Public domain/Wikimedia Commons

彼は本を出した後、共和党から選挙に出て上院議員になりました。当初はトランプに批判的だったのですが、副大統領候補を選ぶあたりから急に支持に転じ始めたのです。トランプの懐に転がり込んで、見事、副大統領になりました。

また、バンス氏は多様性を重視するヨーロッパにも批判的です。イギリス・ロンドンの市長はパキスタン系イギリス人でイスラム教徒のサディク・カーン氏ですが、彼に対してバンス氏は「イギリスは核を持ったイスラム教徒の国になった」などと述べていました。これに対しては、党を超えてイギリス政界から抗議の声が上がりました。

バンス氏は常に高圧的・攻撃的です。トランプとウクライナのゼレンスキー大統領の初会談の前に大統領執務室で行われた対面の場でも、バンス氏はゼレンスキー大統領に対し「無礼だ」などと食ってかかり、その場面が世界に報じられました。こうした振る舞いから、バンス副大統領は「トランプ政権の番犬」「攻撃犬」などと揶揄されています。

「トランプよりトランプらしい」閣僚たち

この二人は特に強烈ですが、その他の閣僚も驚くような顔ぶれです。

こうした閣僚の特徴を見ると、「ミニ・トランプ」的な発言や行動をする閣僚が目立ちます。過去に物議を醸す発言や行動をした、リスクの高い人物が多数です。そろって既存の政府機関を再編・縮小する方針を掲げているというのが共通の特徴です。

閣僚たちが「トランプよりトランプらしく」振る舞おうとする現象は、政策の極端化をもたらします。トランプの発言や政策がすでに物議を醸すものであるにもかかわらず、その側近たちはさらに過激な言動や政策を展開しようとします。