NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で家臣の妻を銃撃の的にしてみせた北海道南部の領主・松前道広(えなりかずき)。系図研究者の菊地浩之さんは「当時、北海道では米がとれなかったが、松前家は豊かで大名格となり、道広は吉原の遊女を落籍した」という――。
松前道廣を怪演する、えなりかずき。ドラマ「恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?」の完成披露試写会にて、2012年3月8日
写真=時事通信フォト
松前道廣を怪演する、えなりかずき。ドラマ「恋なんて贅沢が私に落ちてくるのだろうか?」の完成披露試写会にて、2012年3月8日

「べらぼう」で蝦夷地をめぐる幕閣のかけひきが展開

湊源左衛門蝦夷地えぞちを松前より召し上げてくださるなら、どのような労も厭いませぬ。松前道廣まつまえみちひろは…あの男は北辺に巣くう鬼にございます」

田沼意知「鬼?」
(「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第20回「蝦夷桜上野屁音」より)

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に蝦夷地の松前藩主・松前道広(廣)(1754~1831年)、その異母弟・松前広年ひろとし(1764~1826年)が登場する。道廣役が「渡る世間は鬼ばかり」で子役を演じていたえなりかずきで、広年を演じるのは、芸人のひょうろく。松前家は北海道で唯一の大名だ。本州の大名と違ったところがあるのだろうか。

俗に松前藩(北海道松前郡松前町)と言っているが、正式名称は福山藩というらしい。現在ではゴールデンウィークの桜の名所で有名な松前城も、正式には福山城というのだそうだ。

松前家は武田氏の末裔を自称している。武田氏といえば、甲斐(山梨県)の武田信玄が有名だが、鎌倉時代に源頼朝、南北朝時代に足利尊氏に属して武功を挙げ、甲斐の他にも安芸(広島県西部)、若狭(福井県南西部)の守護職に任じられた。松前家はこの若狭武田氏の末裔を名乗っているが、実際のところはかなり怪しい。

【図表】松前家の家系図
筆者作成