パートタイム労働者の中には、自分自身が雇用保険に加入しているかさえもわかっていない人がいるという。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「雇用保険と扶養範囲を混乱している人が多い。パート従業員でも失業手当はもらえ、有給休暇も取得できる。加入させない、取らせない雇用主なら罰則規定がある」という――。
雇用保険への“勘違い”や“思い込み”
夫の給料だけでは生活に不安があるので働きに出るというパート主婦が増えています。中には、夫の扶養枠から出ないように労働時間を調整しながら働く女性もいるでしょう。
そうしたパート主婦の中には、自身が「正社員」ではないという理由から、「辞めても失業保険は出ない」「パートだから有給休暇なんてない」と思い込んでいる人は意外と多いようです。パートでも失業手当を受給できたり有給休暇を取ることは可能です。「パートだから……」と思い込んでいる人は、まずは雇用保険とは何かを理解しておくといいでしょう。
雇用保険とは、年収にかかわらない労働者全体のための制度で、労働者が失業した際などに救済をするための保険です。また、雇用保険に「扶養」という概念はありません。雇用主には、会社の業種や事業規模にかかわらず、一定の条件に当てはまる従業員が一人でもいるならば、本人の意思とは関係なく雇用保険への加入が定められ、労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届出など法律で義務付けられています。
雇用保険に加入する(被保険者になる)条件は、「週20時間以上の所定労働時間があり、雇用期間に定めのない人や31日以上の雇用期間が見込める者」と決められていますから、週20時間働き、31日以上継続して雇用されている(昼間部の学生以外)人は、すべて加入対象者となります。週20時間以上働いても、勤務先との契約期間が30日以内の短期の人は対象になりません。ただし、当初は31日以上働くという条件ではなかったとしても、その後に31日以上働けるとわかった場合は、加入対象となります。
まずは、雇用保険加入の最大のメリットの1つ、失業手当(保険)から見てみましょう。