受験生のビタミンDは足りている?

では、受験生はもちろん、社会人も含めビタミンDを十分に摂れているかをどうやって判断すればよいのでしょうか? 最も確実なのは「25-ヒドロキシ(OH)ビタミンD」という血液検査で、体内のビタミンDの貯蔵状態を知ることができます。

数値はng/mLで表され、一般的には30ng/mL以上であれば「十分」、20〜30ng/mLが「不足」、20ng/mL未満は「欠乏」とされます。さらにアメリカでは、20ng/mLあれば健康維持には十分とされていますが、骨と筋肉の健康を最大限に引き出すために30ng/mL以上が望ましいと推奨されています。

ただし、日本で日常的に25-ヒドロキシビタミンDの検査を受けることはあまりなく、骨粗鬆症など明らかな問題がなければ医療機関でもわざわざ検査は行いません。そもそもビタミンD不足の症状は非常にわかりにくいのです。なんとなく疲れやすい、風邪をひきやすい、気分がすぐれない。こうした曖昧な不調は、受験勉強中や仕事のストレスや睡眠不足のせいだと思われがちですが、実はビタミンD不足が隠れている場合も考えられます。

実は50代の私自身も、今回25-ヒドロキシビタミンDの測定をしてみたところ、見事に欠乏状態でした。実際、ある調査では受験生に限らず現代日本人のほとんどでビタミンDが不足していたことが発表されています。日本の一般診療では自費検査になることが多いのですが、数千円程度の費用なので気になる方は医療機関で検査してもらってもよいかもしれません。

家庭でできるビタミンDを補う対策

幸い、ビタミンDを補うのは決して難しくありません。生活の中で少し意識するだけで、十分に改善できる栄養素です。

まずは「日光を浴びること」。冬の昼間に、顔や腕を15〜30分程度日光に当てるだけでも、体はビタミンDを合成します。肌の露出が少なくても、通勤通学時になるべく日差しを受ける、昼食後に短い散歩をするなど、日常の中に太陽光を取り入れる工夫が効果的です。もちろん、日焼けや皮膚がんへの懸念がある場合は、朝や夕方の弱い日差しを利用したり、紫外線の強い夏場には時間を短くしたりし、肌の健康を守るバランスも大切です。

次に、「食事の中での工夫」です。焼き鮭やサバの味噌煮、干しシイタケのお味噌汁、ゆで卵など、昔ながらの和食の中にはビタミンDが豊富に含まれています。苦手でなければ、こうした食材を意識的に食卓に取り入れると良いでしょう。最近では、日光を浴びさせてビタミンDを強化したキノコ類も販売されています。食品表示をチェックして、強化食品を選ぶのも一つの手です。

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それでも日光も食事も不十分な場合には、サプリメントを考える価値もあります。日本でも市販されているビタミンDのサプリメントは、1日400IU(10μg)や1000IU(25μg)などの製品が多く、適切に使えば安全です。ただし、ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、摂りすぎると体に蓄積していまいます。

成人の場合は、1日あたり最大4000IUまでのビタミンD摂取は安全であると考えられています。ただし、それを超える高用量では、腎結石、脱力感、胃腸障害などのリスクが高まることがあるため、注意が必要です。過剰摂取は逆に体に害を及ぼす可能性があるため、医師や薬剤師に相談しながら摂取するようにしましょう。

受験勉強や仕事の活力を支える見えない力

もちろんビタミンDを摂取したからといってただちに試験で良い点が取れたり、仕事のパフォーマンスがよくなったりするわけではありません。そんな魔法の栄養素ではありませんが、体と心をベストな状態に保つための「土台」を支える存在であることは確かです。集中力を発揮し、風邪を引かずに勉強や仕事を続けるためには、健康が何よりも大切です。

子供がいるご家庭の場合、親としてできるサポートは、塾選びや模試の結果だけではありません。食卓と日常のちょっとした工夫が、子供の大切な受験期間を支えるのです。カロリー過多で肥満が世界的に問題になっていますが、ビタミンDの不足などの微量栄養素の不足にどう向き合うかも、未来を担う子供たちの成長や家族の健康を左右するのです。

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