教育投資ジャーナリストの戦記さんは、2016年から1人娘の学習状況をブログなどで発信している。そんな情報発信を続ける理由は何か。東大生作家・西岡壱誠さん、カルペ・ディエム著「令和の受験親の『フツウ』」(未来図)から、受験親たちの実態を紹介する――。
テスト勉強をする子供の手元
写真=iStock.com/west
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親が“受験アカウント”をやっていた

2025年に東大に合格した人たちにアンケートやインタビューを実施しているのですが、その人たちから話を聞いていると、こんなことを口にしている人が多い印象があります。

自分「受験生時代、SNSはやっていましたか?」
東大生「いや、自分はやっていませんでした。でも、代わりに親がやっていましたね」

最初はこの言葉の意味がよくわかりませんでした。しかし調べていくうちに、この「親が受験のためにSNSアカウントを作る」というのが、令和の受験生の親御さんなら普通の行為になっていることがわかりました。

子供の代わりに、親が受験に関するSNSアカウントを作り、そこで情報を得たり、子供の成績や学習の進捗状況に関する情報を発信したりする……そういったことをする親御さんが増えてきているのです。特に2025年入学の東大合格者のうちの複数人が「自分の中学受験の時からずっと、親がSNSで受験に関して発信している」「高校受験の際にアカウントを作って、そこからずっと自分の成績や勉強の進捗度合いについて公表している」と述べていました。

一見すると、メリットがわからないこの「受験のためのSNS運用」という行為ですが、実は今後の受験においてはむしろ当たり前のように必要な行為になるかもしれないのです。


入試の変化が激しすぎる

自分は最近、この行為を題材にした漫画「令和の受験親の『フツウ』」を制作しました。その制作の際に、Xでフォロワーが2万人いる教育投資ジャーナリストの「戦記」さんに取材を行っています。

彼は1人娘の中学受験の様子をブログで2016年から発信するようになり、現在も娘さんの学習状況についても含めてさまざまな情報発信を行っているインフルエンサーです。令和の受験親にとって普通になってきている「受験のためのSNS運用」について、その実態を解説したいと思います。

まずそもそも、なぜ受験生の子供を持つ親御さんがSNSで情報を収集するようになっているのか? それは、昨今の入試の激しすぎる変化が関係しています。

最近は、受験の形態が大きく変化しています。中学受験では人気や偏差値・志願者数の増減は変化が激しく、1年単位で変わってしまうのがいまや普通になっています。高校受験でも無償化の影響を受けて、人気の学校とそうでない学校の差が大きく開いてしまっています。

中でも大学入試は一番大きな変化が起こっています。一般入試以外の入試形態が増えて、単純なペーパーテスト以外にも課外活動の実績や外部の検定試験などの実績が求められるため、昔よりも大学が求める学生像やその大学の情報を知る必要が出てきています。